夏音-Ring-
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关于此作
七月の終わり。 都心から二時間ほどの小さな街、百合ヶ浜。 この街に、百合ヶ浜学園という私学がある。毎年、全国大会へ選手を送り出している水泳の名門だ。男子は中程度だが、女子は強い。 その三年に、三雲響という男子生徒がいた。 最近まで男子水泳部に所属していた響だったが、今はもう部を引退し、知らず溜息のこぼれる受験生ライフを送っている。 六月二十日、県大会。 全国大会の予選とも言えるこの競技会で、百合ヶ浜学園は大敗を喫した。 今年、全国出場の切符を手に入れたのは、女子部三年のエース、星崎彩音、ただひとりのみ。 男女供に、他の全員が敗退してしまった。 全国大会出場を目指して、三年間、水泳に打ち込んで来た響の夢も、この日、終わった。 夢が潰える、それ自体は、そう難しく考えるほどのことでもない。 どんな理由があるにせよ、自分の力が足りなかった、ただそれだけのことだ。 空虚の穴は、押し寄せてくる日々に身を任せていれば、自然に埋まっていく。 多分、この世の中の殆どの人は、そうして生活に埋もれ、ただ、それだけで人生が終わって行く。 県大会からひと月が過ぎ、一学期が終わる頃になってようやく、響も、「まぁ、そんなものかな」と思えるようになっていた。 響の幼なじみであり、今年、百合ヶ浜学園から唯一の全国大会出場選手、星崎彩音。 生来、いい加減な性格なのか、天才ゆえの余裕なのか、およそ一ヶ月後に控えた全国大会のことなど頭の片隅にもないかのように、以前と変わらずに明るい。 自分ひとりが勝ち残ってしまったことを、彩音は全く気にしていない、というわけではなかった。 特に、響。 響が全国出場に情熱を注いできた三年間を、彩音は知っている。 だが、県大会からもう、ひと月が過ぎてしまった。 気にしてもどうにもならない事は、誰でも、次第に忘れがちになって行く。 彩音は彩音の毎日を、自分のスピードで泳いでいる。 「まぁ、そんなものかな」と思えるようになった響に少し安心して、彩音は自分のペースで日々を過ごしていっている。 春の入学時、彩音にひと目ぼれをして水泳部に入部した一年生、霧坂鈴菜。 今は、半ば彩音専属でマネージャーをしている。 その献身的な態度や、責任感の強さ、行動的な性格のお陰で、彩音にも可愛がれるようになり、それなりに幸せな日々を送っている。 県大会での百合ヶ浜学園の敗退は、鈴菜に自分の部での存在意義を改めて自問させた。 水泳に対する情熱ではなく、彩音に対する情欲で、水泳部に入部してしまった自分は正しいのか、どうか。 だが、それを気にしても、もう、仕方がない。 今は、百合ヶ浜学園最後の希望である彩音の役に少しでも役に立つことで、泳げない自分を部員だと認めてくれる水泳部の皆への恩を返すのみ。 基本的には、鈴菜は、まぁ、そういう人間だった。 結局のところ、響の生活は、相変わらずだ。 プールで泳ぐことがなくなったとか、水泳ではなく受験の参考書を買うようになったとか、その程度の変化を、難しく考えることはない。 どうしても日々は過ぎて行く。 受験のことを考えると頭が痛いが、それは、至って普通、ごくごく日常的、なこと。 校舎へ向かう坂を登れば、海の方からゴスペルが響いて来るような街、百合ヶ浜。 五月にはもう海も開くようなこの土地で、響や彩音、鈴菜たちの夏休みが始まろうとしている。
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